立ち去る私達に、野次馬の女子達が名残惜しそうに叫ぶ。
「凛道さーん!」
「行っちゃ嫌~!」
「撮れなかったよぉ~」
「インスタさせて~!」
お断りよ。
(ただでさえ、目立つの嫌なのに・・・ネットに画像がアップされたらたまらない。)
「うはははは!凛、肉食おうや、肉!牛串!」
「りっ君、ますみのコットンキャンディー忘れないでぇ~!カラフルなハートが食べたいのー!」
「凛、食いすぎるなよ!?」
「リンリン、俺とシェアしよう~!仲良く分けて食べようね♪」
「いえ、俺と半分こして食べましょう、ぼっし~。」
「テメーら、普通に1人分を食べて頂け!凛さん、なにを買ってきましょうか?」
「いえ、自分で買うからいいですよ。」
断りを入れつつ、屋台の並ぶ人ゴミを目指す。
周囲からの視線を感じつつも、それらをスルーして立ち去る。
「凛道さん。」
・・・つもりだった。
「こんばんは、凛道蓮さん。」
「え?」
聞き覚えのある声。
聞いただけで吐き気がする感覚。
声の主を見えて体が固まった。
「凛道さんの集会、見ましたよ。すごかったですね。」
(渕上ルノア!?)
いたのは、派手な浴衣を着たいじめっ子。
横には彼氏である飯塚アダム。
少し後ろの位置の両脇には、鳥海と難波が控えており、そのさらに後ろには撮り巻数人を率いていた。
この女の登場に、真っ先にカンナさんが反応する。
「テメー何しに来た!?」
「今夜会えてラッキーだわ。あたし、あなたに話があるのよ、凛道さん。」
「シカトか!?」
(落ち着いて、落ち着いて、凛!)
平静を装いながら、視線を逸らす。
というか、まともに顔が見れない。
(怖い。)
軽いパニックになる。
何で渕上が?
なんであいつがいるの!?
「何のつもりだクソアマ!?」
「うるさいな・・・あたしは凛道さんに話しかけてんだけど?」
「ああ!?部外者の分際で、凛と会話できる立場だと思ってんのか!?」
「少なくとも、知り合いよ。」
(知り合い!?)
その言葉にドキッとする。
(知り合いって・・・・まさか、バレて・・・・!?)
「テメーと凛が知り合いだと!?寝てんのか、コラ!?」
「ホント、偶然て面白いわねぇ~」
心臓が嫌な音を立ててなる。
目を閉じたくなるのを我慢して、目を細める。
視線を合わせないようにしながら、あの女が放つ次の言葉を待った。


