彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)




立ち去る私達に、野次馬の女子達が名残惜しそうに叫ぶ。



「凛道さーん!」

「行っちゃ嫌~!」

「撮れなかったよぉ~」

「インスタさせて~!」



お断りよ。


(ただでさえ、目立つの嫌なのに・・・ネットに画像がアップされたらたまらない。)



「うはははは!凛、肉食おうや、肉!牛串!」

「りっ君、ますみのコットンキャンディー忘れないでぇ~!カラフルなハートが食べたいのー!」

「凛、食いすぎるなよ!?」

「リンリン、俺とシェアしよう~!仲良く分けて食べようね♪」

「いえ、俺と半分こして食べましょう、ぼっし~。」

「テメーら、普通に1人分を食べて頂け!凛さん、なにを買ってきましょうか?」

「いえ、自分で買うからいいですよ。」



断りを入れつつ、屋台の並ぶ人ゴミを目指す。

周囲からの視線を感じつつも、それらをスルーして立ち去る。





「凛道さん。」

・・・つもりだった。





「こんばんは、凛道蓮さん。」


「え?」






聞き覚えのある声。

聞いただけで吐き気がする感覚。

声の主を見えて体が固まった。





「凛道さんの集会、見ましたよ。すごかったですね。」

(渕上ルノア!?)






いたのは、派手な浴衣を着たいじめっ子。

横には彼氏である飯塚アダム。

少し後ろの位置の両脇には、鳥海と難波が控えており、そのさらに後ろには撮り巻数人を率いていた。

この女の登場に、真っ先にカンナさんが反応する。



「テメー何しに来た!?」

「今夜会えてラッキーだわ。あたし、あなたに話があるのよ、凛道さん。」

「シカトか!?」



(落ち着いて、落ち着いて、凛!)



平静を装いながら、視線を逸らす。

というか、まともに顔が見れない。



(怖い。)



軽いパニックになる。

何で渕上が?

なんであいつがいるの!?



「何のつもりだクソアマ!?」

「うるさいな・・・あたしは凛道さんに話しかけてんだけど?」

「ああ!?部外者の分際で、凛と会話できる立場だと思ってんのか!?」

「少なくとも、知り合いよ。」



(知り合い!?)



その言葉にドキッとする。



(知り合いって・・・・まさか、バレて・・・・!?)



「テメーと凛が知り合いだと!?寝てんのか、コラ!?」

「ホント、偶然て面白いわねぇ~」



心臓が嫌な音を立ててなる。

目を閉じたくなるのを我慢して、目を細める。

視線を合わせないようにしながら、あの女が放つ次の言葉を待った。