彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)




「僕にナビを知ろと言いましたが、完全に見失っていますが・・・」

「平気よ!」



フンと鼻を鳴らしながらミクお姉さんは言った。



「あれは蓮君を連れ出すための口実よ!」

「口実!?」

「私の目の届くところにいないと、心配で仕事にならないのよ!」

「え!?そ、それって・・・」



(そこまで私を思って下さってるんですか、瑞希お兄ちゃん!?)



〔★普通に言葉通りの意味だ★〕



「とにかく、このまま黒木を追うわ!スピード出すから、振り落とされないようにしてね!?」

「え!?スピードは落とした方が良いんじゃないですか!?車のナンバーがわかるとはいえ、夜に目視(もくし)で確認するのはちょっと~」

「その必要はないわ!奴らがどこにいるか、わかってるから!」

「え!?」

「黒木はどっちに行った?」

〈そのまま直進でよろしく!〉



瑞希お兄ちゃんの声に答えるように、かすかに聞こえた烈司さんの声。

それで、ミクお姉さんの耳にイヤホンがついていることに気づく。



(携帯のイヤホンで、烈司さんと通話してるんだ!烈司さんから直接指示をもらいながら、追跡しているのね!?)



「あの、ミクお姉さん・・・!」

「黙って!お客さんが来たみたいだから。」

「お客さん?」




ファンファンファンファン!

「げ!?」




相手は警察だった。

背後から迫るパトカーが、こちらへと呼びかけてくる。



《前の二人乗りのバイク、止まりなさい!》

「えー!?僕らじゃなくて、追いかけるべき相手がいるでしょう!?MESSIAHとか!」

「くそ!ヘルメット被ればよかったわ・・・」



ノーヘルで飛ばしたこともあり、すぐに警察がマークしてくれた。

しかし、バイクを運転してるのは女装していても瑞希お兄ちゃん。




ババババババババ!

「わっ!?」




迫っていたパトカーを、あっという間に引き離した。