「ひどい奴ですね・・・あなたを、女の子を残して逃げるなんて。」
「・・・女も一緒だよ。」
「え?」
「見えなかったのか?あたし以外にも、女が乗ってただろう?黒木は、あいつらは・・・車の女達と逃げたんだ。」
「車の女?」
「そうだよ!あいつら、あたしらみたいにお店に出す女達とは別に、車で営業に出す女たちがいるんだよ!」
「車で営業してんですか!?」
「そう!道でお客さんに声かけて、車の中にいる女を選ばせて・・・気に入ったら、そのままホテルに運んで回収する・・・。車なら、移動も便利だからって・・・」
ポケットから携帯を出して電源を入れる。
「おい!電池切れじゃなかったのか!?嘘だったのか!?」
「記憶にございません。」
「どこの政治家だよ!?」
「僕はヤンキーです。」
画面タッチをしながらあしらう。
車のナンバーをLINEで一括送信する。
「なにしたんだよ!?サツか!?」
「いいえ。おまわりさんよりも怖い仲間に通報です。追跡してもらうように、非常線はりました。」
「マジかよ・・・・!?」
そう説明した時だった。
バババババババ!
先ほどとは違うエンジン音が響く。
「凛っ!」
「あなたは!?」
(瑞希お兄ちゃん!!)
「ミクお姉さん!!」
黒の単車にまたがった美人が、さっそうと現れた。
「り・・・・蓮君、無事!?」
私を蓮と呼び直しながら、バイクを横づけするお姉さん。
「ご覧の通りです。」
「よかった!奴らはどっちに行った!?」
「あっちです。」
黒木達が消えて言った方向を指させば、勇ましい声で言った。
「乗れっ!」
ババババババババババ!!
エンジンをふかしながら、後ろに乗るように指示してくる。
「ナビしてくれ!」
瑞希お兄ちゃんがまたがってるのは、いつものバイクではなかった。
だけど、ミクお姉さんの引き立て役にはピッタリの単車だった。


