彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)




「くっそ!落ちないぞ!」

「どうすんのよ、黒木ちゃん!」

「こうなったら・・・・こうすんだよっ!」



様子を見ていた黒木が、助手席を後ろに倒した。

何をするのかと思ってみた時、奴の手はちあきをつかんでいた。



「きゃああ!?」

「あ!?」

(うそ!?)



ちあきを、私めがけて投げつけてきた。



「ひっ・・・・いやあああああああ!」



そのままスルーもできたけど・・・



「危ない!!」



車から両手を離す。

放り出された体を捕まえる。

かばうように抱きしめた。



ドス―ン!!

「きゃああああああああ!!」

「くっ・・・・!」



ゴロゴロと転がる身体。



「はっはっはっ!!女に優しいは噂通りだなー!?」


(お、おのれ・・・!!)




その笑い声を聞きながら、なんとか姿勢を立て直す。




パッパー!!

「へ?」




クラクションと共に、光に照らされる。

あれ?ここって、道路の真ん中じゃない?

しかも、出合頭に注意とかいう標識があるね。

振り向けば、大きなトラックが迫っていた。



(ひかれる?)



血の気が引いた瞬間、ちあきが叫びながら抱き付いてきた。



「いやぁぁぁぁ!!」

「くっ!?」



これどう逃げればいいの!?

右?左?前?え?えーと!



(間に合わない!?)





―――――――――ギュワーン!!





真っ白な頭に、エンジン音が響く。




ガシッ!!

「え?」




体が地面から浮く。





ギュワワワ―ン!!





キキーっ!!





大きなブレーキ音がした



「え・・・?」



目に映ったのは、私達がいたであろう場所に止まっている大型トラックの姿。



「見たか、今の!?」

「車から落ちた男女を、バイクの奴が助けたぞ!」

「すげーパワフル!」

「神業じゃん!」

「バイク・・・・?」



ドッ、ドッ、ドッ!





背後から伝わるエンジン音。

腰のベルトをつかまれている感覚。

いつもとは違う微妙な視界。

私はちあきに覆いかぶさる形で、誰かに支えられていた。





「あ・・・?」





見上げれば、私の腰のベルトをつかみ、バイクにまたがったヘルメットの男がいた。