「くっそ!落ちないぞ!」
「どうすんのよ、黒木ちゃん!」
「こうなったら・・・・こうすんだよっ!」
様子を見ていた黒木が、助手席を後ろに倒した。
何をするのかと思ってみた時、奴の手はちあきをつかんでいた。
「きゃああ!?」
「あ!?」
(うそ!?)
ちあきを、私めがけて投げつけてきた。
「ひっ・・・・いやあああああああ!」
そのままスルーもできたけど・・・
「危ない!!」
車から両手を離す。
放り出された体を捕まえる。
かばうように抱きしめた。
ドス―ン!!
「きゃああああああああ!!」
「くっ・・・・!」
ゴロゴロと転がる身体。
「はっはっはっ!!女に優しいは噂通りだなー!?」
(お、おのれ・・・!!)
その笑い声を聞きながら、なんとか姿勢を立て直す。
パッパー!!
「へ?」
クラクションと共に、光に照らされる。
あれ?ここって、道路の真ん中じゃない?
しかも、出合頭に注意とかいう標識があるね。
振り向けば、大きなトラックが迫っていた。
(ひかれる?)
血の気が引いた瞬間、ちあきが叫びながら抱き付いてきた。
「いやぁぁぁぁ!!」
「くっ!?」
これどう逃げればいいの!?
右?左?前?え?えーと!
(間に合わない!?)
―――――――――ギュワーン!!
真っ白な頭に、エンジン音が響く。
ガシッ!!
「え?」
体が地面から浮く。
ギュワワワ―ン!!
キキーっ!!
大きなブレーキ音がした
「え・・・?」
目に映ったのは、私達がいたであろう場所に止まっている大型トラックの姿。
「見たか、今の!?」
「車から落ちた男女を、バイクの奴が助けたぞ!」
「すげーパワフル!」
「神業じゃん!」
「バイク・・・・?」
ドッ、ドッ、ドッ!
背後から伝わるエンジン音。
腰のベルトをつかまれている感覚。
いつもとは違う微妙な視界。
私はちあきに覆いかぶさる形で、誰かに支えられていた。
「あ・・・?」
見上げれば、私の腰のベルトをつかみ、バイクにまたがったヘルメットの男がいた。


