彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)




「凛たん、黒木はどこだ!?」

「え!?」



逃げ腰の敵と戦っていた烈司さんが聞いてきた。

それで思い出す。

一番逃がしていけない敵のことを。

そいつがいた場所を見るが――――――――



「いない!?さっきまで、その辺にいたんですが~」

「なにしてる、凛道!?見失ったのか、馬鹿者め!」

「す、すみません!」



獅子島さんの罵声を受け、大慌てで辺りを見渡す。

ナンパなロン毛を探す。



「蓮君!あそこ!黒木よ!」

「え!?」



私の背中を叩きながら、なずなちゃんが声を張り上げる。

彼女が指さす先を見れば、ステージの裏に消えていく黒木が見えた。



(いた!!)

「あの野郎~!!待てっ!!」

「凛ちゃん!?」

「凛たん!」

「凛道!」

「みなさん、この場はお願いします!なずなちゃん達をよろしくです!」

「蓮君!」



なずなちゃんの声を背に走る。

黒木達を追いかければ、非常口らしい扉が開けっ放しになっていた。



ここから外に出たのね!?



(逃がさないわよ!)



数段飛ばしで駆け下りる。



「どけよ!テメーら!」

「邪魔なんだよっ!

「ひき殺すぞコラ!」

「クソゴミ共が!」



地上に降りた時、そんな言いあいが聞こえた。

声のする方を見て叫んだ。



「丸山さん!?」



見れば、ホームレスの人達が、1台の車を取り囲んでいた。

それは私をここまで乗せてきた車で、包囲する集団の中に丸山さんを含む顔見知り達がいた。

人の隙間から、助手席に乗っている黒木が見えた。

どうやら、丸山さん達が足止めしてくれていたようだ。



〔★ホームレス部隊が現れた★〕