「春野なずなさん、お姉さんのみさきさんが君を探してます。」
「お姉ちゃんが私を!?」
「はい。」
なずなちゃんを部屋の隅へと誘導しながら言った。
「こちらに来て、大原さんやその仲間達と君をずっと探しています。僕も頼まれたんです。」
「うそ・・・!?」
「みさきさん、すごく心配してますよ。他のご家族も・・・」
「お姉ちゃん・・・こっちに来てるの・・・!?」
私の言葉になずなちゃんの表情が明るくなる。
「来てますよ。毎日、毎晩・・・この2週間、探し続けてるんですよ。」
「あたしのために、お姉ちゃんが・・・!」
そう言った彼女の目元が潤む。
「会いたい・・・お姉ちゃんに、会いたいよぉ・・・!」
「それはお姉さんも同じです。だから、一緒に帰りましょう。」
「っ!・・・・無理だよ・・!」
そう誘えば、途端に表情を険しくさせるなずなちゃん。
「なぜです?帰りたくないんですか?」
「帰れないよ!私・・・売春しちゃったんだよ!?会わす顔ないよ・・・」
思わぬ返事に言葉が詰まる。
「学校も家もつまんなくて、こっちに来たけど・・・自分がどれだけ幸せだったか、今になってわかった・・・。なんで家出なんかしたんだろう・・・」
「・・・そう思ってるなら、なおさら帰りましょう?」
「だから帰れないって!帰りたいけど・・・帰れない・・・こんな私が帰っても、お姉ちゃん達だって困るよ・・・」
「違います。お姉さんが、ご家族が望んでいるのは、なずなちゃんが無事に帰ってくることです。帰ってこない方が困りますよ。」
「きれいごとだよ!絶対に怒られる・・・」
「怒るでしょうね。大好きだからこそ、怒るんですから。」
「え?」
「大事だからこそ、怒る。違いますか?」
「・・・うっ・・・」
私の問いかけに、口元を抑える。
目から涙がこぼれる。


