彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)




「な、何で、私の名前を・・・?」

「あ、君がなずなちゃん?」



画像と同じ顔の女の子だった。

実物はかなり痩せてるけど間違いなかった。

そのまま、会話を続けようとしたのだけど・・・




「うあああああああ!」




突然あがった叫び声で中断された。

女の子の1人が立ち上がり、奇声を上げて叫び出したのだが・・・




「え?」

(坂口さん!?)




声の主は、行方不明になっている塾の子だった。

面影は残っているが、別人のようにやつれていた。



「ど、どうしたんですか!?」

「薬が切れたんだよ!」



私の問いになずなちゃんが答える。



「その子、ドラッグ中毒で・・・」

「ええ!?」

「ああああああああああああ!!」



奇声を発し、手足をばたつかせれる坂口さん。



(これが、あの彼女なの・・・!?)



気は強いけど、礼儀正しかった同級生を知るだけに、あまりの変貌ぶりに戸惑う。



「あひひひ!ひひひひ!」



そうしているうちに、坂口さんは頭を壁にぶつけ始める。



「あ・・・やめなさい!」



坂口さんに近づくことに抵抗はあった。

正体がばれないかと気になったけど、そうも言ってられない。



(このままじゃ、怪我だらけになっちゃう!)



「やめてください!」



冷や冷やしながら体を抑えるが、それは杞憂だと知る。



「ひー!ひー!あひひひひ!」



(え!?)



目があったのに、彼女の態度は変わらなかった。



「サプリ・・・ちょうだい!ちょうだい!くーすーりー!」



頭を前後左右に振り続けるばかりだった。



(私に気づいてない?)



ホッとしたのもつかの間。



ガンガンガン!



「ちょっと!?」



(壁や床に体中を打ち付ける自傷行為は良くない!)



私を見ることなく、私の手から逃れるように暴れる坂口さん。



「やめてください!落ち着いてください!」

「あああああああ!」



説得しながら、何とか押さえつける。