彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)




「この真夏に風邪?大丈夫?」



私をのぞき込む金髪男は愛想がよかった。



「調子悪くて、座り込んでるの?」

「・・・。」



この問いに、首を縦に振る。

マスクをしてる以上、おしゃべりじゃない方が良いと判断したから。

これに相手は、ニコニコしながらしゃべり続ける。



「ならよかった。可愛いけど、男?女?」

「・・・男。」

「へぇーこの後ヒマ?」



そう語る眼が、光った気がした。

首を縦に振れば、距離を詰めてきた。



「行くとこある?」



男の質問に、首を横にふる。



「じゃあ、お兄ちゃんと一緒に来ない?バイト代が出たからおごるよ。」



明らかに怪しかったので―――――



「うん。」



首を縦に振って、ついて行くと意思表示をする。



(うまく行けば、潜入できるかも!?)



「よし!おいで!」



優しく私の手をつかむ。

抵抗しないで、しおらしくついて行った。

そんな私に小声でいいなぁ~という周囲の少女達。



(いいわけないでしょ、ばか。)



これから地獄が始まるんだから。



(私じゃなくてこいつらのね・・・!)



〔★凛は敵をロックオンした★〕



金髪男は、ロータリーに止めていた車に私を乗せた。

丸山さんは、私が車に乗るところまで見届けてくれた。



(大丈夫だよね・・・)



作戦では、私が連れて行かれたのを見て、丸さんが交番に駆け込むことになってる。

念のため、『別の場所』にも通報してもらう。

大事なのは、私を尾行してもらうことじゃない。

MESSIAHに、未成年が連れて行ったという事実だ。

車種はわからないけど、車内に流れる曲はK-ポップだった。

助手席でキョロキョロと車内を物色する。



「なにか珍しいのであるか?」



男の問いに、首を縦に振って答える。



「ははは!君、声が出ないの?」



ゴホゴホと、せき込む真似をしながらうなずく。



「ふーん・・・そりゃいいな。」



(なにがいいんだよ!ますます怪しい・・・!)



そう確信する中、車は走りだす。



「君の、名前は?」

「・・・蓮。」



フルネームはまずいと思ってそう答える。