「この真夏に風邪?大丈夫?」
私をのぞき込む金髪男は愛想がよかった。
「調子悪くて、座り込んでるの?」
「・・・。」
この問いに、首を縦に振る。
マスクをしてる以上、おしゃべりじゃない方が良いと判断したから。
これに相手は、ニコニコしながらしゃべり続ける。
「ならよかった。可愛いけど、男?女?」
「・・・男。」
「へぇーこの後ヒマ?」
そう語る眼が、光った気がした。
首を縦に振れば、距離を詰めてきた。
「行くとこある?」
男の質問に、首を横にふる。
「じゃあ、お兄ちゃんと一緒に来ない?バイト代が出たからおごるよ。」
明らかに怪しかったので―――――
「うん。」
首を縦に振って、ついて行くと意思表示をする。
(うまく行けば、潜入できるかも!?)
「よし!おいで!」
優しく私の手をつかむ。
抵抗しないで、しおらしくついて行った。
そんな私に小声でいいなぁ~という周囲の少女達。
(いいわけないでしょ、ばか。)
これから地獄が始まるんだから。
(私じゃなくてこいつらのね・・・!)
〔★凛は敵をロックオンした★〕
金髪男は、ロータリーに止めていた車に私を乗せた。
丸山さんは、私が車に乗るところまで見届けてくれた。
(大丈夫だよね・・・)
作戦では、私が連れて行かれたのを見て、丸さんが交番に駆け込むことになってる。
念のため、『別の場所』にも通報してもらう。
大事なのは、私を尾行してもらうことじゃない。
MESSIAHに、未成年が連れて行ったという事実だ。
車種はわからないけど、車内に流れる曲はK-ポップだった。
助手席でキョロキョロと車内を物色する。
「なにか珍しいのであるか?」
男の問いに、首を縦に振って答える。
「ははは!君、声が出ないの?」
ゴホゴホと、せき込む真似をしながらうなずく。
「ふーん・・・そりゃいいな。」
(なにがいいんだよ!ますます怪しい・・・!)
そう確信する中、車は走りだす。
「君の、名前は?」
「・・・蓮。」
フルネームはまずいと思ってそう答える。


