土臭い。
オトリに変装して、最初に思ったことがそれだった。
「ねえ、あの子・・・」
「汚い・・・」
「顔は可愛いのに・・・」
「虐待かな?」
行きかう人達が、私を見ながらそんなことを言う。
(想像以上に、効果があるみたいね。)
つなぐは言った。
可愛いそうな子に程、人は声をかけたくなる、と。
だから、両手だけでなく、両足の太ももあたりまで怪我を作った。
ペンを使ったリアルな傷を描いてもらった。
手の甲のひっかき傷も、みみずばれも、ただのイラスト。
さらに、リアリティを出すため、顔や指など見える場所にばんそうこうを貼られた。
仕上げに傷薬用の消毒液を吹きかけ、野宿してました感を出すために、背中に土をつけることも忘れなかった。
持ち物として借りたつなぐの中学時代の学生カバンも、家出っ子らしさを出すのに十分だった。
周囲の視線を無視しながら、家出っ子に声をかける大人が集まる場所へと行く。
そこにはすでに、神を待つ未成年であふれかえっていた。
その様子を見渡しながら思う。
(不思議な場所ね・・・)
スマホに夢中になってる若者の側で、ゴミをあさっている浮浪者がいる。
どこまで情報伝達がいってるのかわからないが、ゴミを集めるふりをしながら、丸山さん達が私を見てる。
つかず離れずで、丸山さんがついてきてくれている。
地べたに座りながらスマホを見ている少女たちの側に腰を下ろす。
声をかけられるか、わからないけど、神待ちなどをしている少女たちの近くに待機する。
地べたに座り、人の流れを眺めていた。
オトリ作戦スタート!
そう簡単に、敵は引っ掛からないだろう。
長期戦を覚悟する。
「君さ、風邪でも引いてるの?」
「え?」
そんな声とともに、肩を叩かれた。
見上げれば・・・
(あ・・・この人・・・)
私にペイントしてくれた徳さんが描いた、MESSIAHのメンバーの似顔絵の中にあった顔。
チラッと目だけで丸山さんを見れば、首を縦に振った。
(ビンゴですか・・・)
こんなに早く見つかるなんて・・・
〔★短期戦で片付いた★〕


