彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)




土臭い。

オトリに変装して、最初に思ったことがそれだった。



「ねえ、あの子・・・」

「汚い・・・」

「顔は可愛いのに・・・」

「虐待かな?」



行きかう人達が、私を見ながらそんなことを言う。



(想像以上に、効果があるみたいね。)



つなぐは言った。

可愛いそうな子に程、人は声をかけたくなる、と。

だから、両手だけでなく、両足の太ももあたりまで怪我を作った。

ペンを使ったリアルな傷を描いてもらった。

手の甲のひっかき傷も、みみずばれも、ただのイラスト。

さらに、リアリティを出すため、顔や指など見える場所にばんそうこうを貼られた。

仕上げに傷薬用の消毒液を吹きかけ、野宿してました感を出すために、背中に土をつけることも忘れなかった。

持ち物として借りたつなぐの中学時代の学生カバンも、家出っ子らしさを出すのに十分だった。

周囲の視線を無視しながら、家出っ子に声をかける大人が集まる場所へと行く。

そこにはすでに、神を待つ未成年であふれかえっていた。

その様子を見渡しながら思う。



(不思議な場所ね・・・)



スマホに夢中になってる若者の側で、ゴミをあさっている浮浪者がいる。

どこまで情報伝達がいってるのかわからないが、ゴミを集めるふりをしながら、丸山さん達が私を見てる。

つかず離れずで、丸山さんがついてきてくれている。

地べたに座りながらスマホを見ている少女たちの側に腰を下ろす。

声をかけられるか、わからないけど、神待ちなどをしている少女たちの近くに待機する。

地べたに座り、人の流れを眺めていた。



オトリ作戦スタート!



そう簡単に、敵は引っ掛からないだろう。

長期戦を覚悟する。



「君さ、風邪でも引いてるの?」

「え?」


そんな声とともに、肩を叩かれた。

見上げれば・・・



(あ・・・この人・・・)



私にペイントしてくれた徳さんが描いた、MESSIAHのメンバーの似顔絵の中にあった顔。

チラッと目だけで丸山さんを見れば、首を縦に振った。



(ビンゴですか・・・)



こんなに早く見つかるなんて・・・



〔★短期戦で片付いた★〕