彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)




「蓮君、タクシー呼んであげるから帰りなさい。」

「え?」

「お姉さん、お仕事があるから付き添えないけど我慢してね。」

「でも、会長さんに頼まれたので・・・」

「あ。」



ふいに、瑞希お兄ちゃんが声をもらす。



「来て!」

「え?」



強引に、暗がりに連れ込まれる。

タクシー乗り場とは真逆の場所。

戸惑えば、正面から抱き付かれる。



「私の腰を抱きなさい。」

「ええ!?」

「早く。」

「はい!」



好きな人からの突然の指示。

逆らう気なんてない。

言われるまま、恐る恐る・・・思い切って抱き付く。



(わわ!?瑞希お兄ちゃんが着てる服、背中が丸見えなんじゃない!?)



素肌に触れる感覚で、顔が赤くなる。



「あ、あの!」



そのことを確かめる前に、相手は小声で言った。



「手はもっと下よ。」

「え!?」

「背中じゃなくて、腰!早くしなさい。」

「す、すみません。」



慌てて触る場所を変えれば、瑞希お兄ちゃんは私と抱き合った状態で背中を壁にをつける。



(ど、どーなるの??)



何が始まるのかと思っていれば、彼の視線が私から離れる。



「?」

(なに?)



不審に思いつつ、同じ方向を見れば、2人の男女が車から乗りてきたところだった。

1人は普通のおじさん。

もう1人は・・・



(若い女の子・・・・・・親子?)



そう思った時、瑞希お兄ちゃんが耳元でささやく。



「あの青いバンから出てきた男女に、気づかれないようにして。車の連中にもね?」

「え?あの親子と、車の人ですか?」

「・・・監視するから、盾になって。」

「わ、わかりました。」

「じゃあ、視線は私だけを見る。体も、もっと密着させて。」

「へ?」

「早く。」

「は、はい。」



言われるがままにくっつく。

悪い指示じゃなかったけど、今の私は男で、お兄ちゃんは女。



(これだと、私がセクハラしてることにならない!?)



〔★完璧な恋人を演じればセーフだ★〕