お姉さんを演じる好きな人から注意を受け、素直にうなずきつつも様子をうかがう。
相手はすぐに動いた。
「坊やはここで、なにをしてたの?」
予想は出来ていた問いなので即答した。
「お姉さんこそ、何してるんですか?」
「ほほほ!坊やには関係ないわよ。それよりも、お姉さんの質問に答えなさい。坊やこそ、何してるの?」
はぐらかしてきたので、私も同じことをした。
「なんでもないです。」
「嘘つくんじゃないわよ!言いなさい!」
口調はお姉さんだけど、お兄ちゃんモードで問い詰めてくる。
だから私も、負けじと言い返す。
「い、言いません!知らない人に・・・言えません!」
「むっ!?・・・それもそうね・・・」
初対面設定がきいているのか、少し考えるようなそぶりをしてから瑞希お兄ちゃんは言った。
「お姉さん、今お仕事中なのよ。」
「お仕事?」
「そう!実はね、家出人の捜査をしてる・・・探偵なの。」
「探偵・・・!?」
(そういう設定にすると言ってたわね・・・)
〔★瑞希の演技が始まった★〕
立ち聞きした設定を思い出して納得する。
同時に、私もそれに合わせようと決める。
「え、探偵なんですか!?僕、本物視るのは、初めてです!」
驚くふりを・・・実際に驚いたけど・・・びっくりしたふりをする。
それを、出来るだけ無邪気に演じた。
そんな私の演技を信じたのか、瑞希お兄ちゃんは優しく言った。
「そうよ。私は女探偵・・・・鈴音ミクよ。」
「鈴音ミク・・・・」
何度聞いても、ボーカロイドをもじった名前に笑いそうになる。
(可愛いなぁ、瑞希お兄ちゃんならぬ、ミクお姉さん♪)
「ミクって呼んでね。あなた、お名前は?」
「あ・・・凛道蓮と申します。」
「蓮君ね。よろしく。」
はじめましての挨拶をする。
変なやり取りだと思いつつも聞いた。


