彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)




おじさんは、私を見ながら親し気に言った。



「そんなに警戒しなくていいよ。今夜、泊まるところあるの?」

「え?」



(泊まるところ?)



補導ならば、名前と学校名を聞いてくる。



(それを聞かず、今夜の宿を聞いてきたということは――――――――――!?)



「行くところがないなら、良かったうちにおいでよ。」

「え!?」

ええええええええ!?



(こいつが『噂の神様』!?)



〔★家出っ子の神様が現れた★〕



(なんか、思ってたのと違う!)



期待を裏切られたとは言わないけど、第一印象がまさにそれ!



(スケベ親父とか、チャラくて遊んでそうとか、オタク系とか、アウトドア系とか、インドア系とか・・・全部違うよ!!普通じゃない!?)



普通のおじさん、良くも悪くも普通の人!



呆然とする私をよそに、おじさんは笑顔で話しかけてくる。



「俺1人だから、好きなだけ泊まってよ。食事はもちろん1日3食。お菓子とジュースも、食べ放題・飲み放題だからね。」

「えーと・・・」

「見ない顔だけど、家出は初めてかな?服の汚れも少ないし、家出してきたばっかりかな?」



(そ、そこまで見てるの!?)



相手の洞察力に驚いていたらおじさんは言った。



「坊やも、いろいろつらいことあったんだろう?その辺も含めて話そっか?」



そう言うなり、私の手首をつかむ。



「え!?な、なにを~!?」

「まずは、ご飯食べようか?焼き肉に行こうよ。若い子は、お肉が好きだよね?」

「あ、あの!」

「良い店知ってるんだよ。おごってあげるから、お金のことは気にしなくていいからね?」



座り込んでいた私を、引き上げるように強引に立たせる。

見た目に反して積極的、誘ってくるおじさん。

意外とグイグイくる相手に戸惑う。

こちらに返事をする隙さえ与えない。



(これが『噂の神様』か!?)



〔★凛はありがたみを感じない★〕