おじさんは、私を見ながら親し気に言った。
「そんなに警戒しなくていいよ。今夜、泊まるところあるの?」
「え?」
(泊まるところ?)
補導ならば、名前と学校名を聞いてくる。
(それを聞かず、今夜の宿を聞いてきたということは――――――――――!?)
「行くところがないなら、良かったうちにおいでよ。」
「え!?」
ええええええええ!?
(こいつが『噂の神様』!?)
〔★家出っ子の神様が現れた★〕
(なんか、思ってたのと違う!)
期待を裏切られたとは言わないけど、第一印象がまさにそれ!
(スケベ親父とか、チャラくて遊んでそうとか、オタク系とか、アウトドア系とか、インドア系とか・・・全部違うよ!!普通じゃない!?)
普通のおじさん、良くも悪くも普通の人!
呆然とする私をよそに、おじさんは笑顔で話しかけてくる。
「俺1人だから、好きなだけ泊まってよ。食事はもちろん1日3食。お菓子とジュースも、食べ放題・飲み放題だからね。」
「えーと・・・」
「見ない顔だけど、家出は初めてかな?服の汚れも少ないし、家出してきたばっかりかな?」
(そ、そこまで見てるの!?)
相手の洞察力に驚いていたらおじさんは言った。
「坊やも、いろいろつらいことあったんだろう?その辺も含めて話そっか?」
そう言うなり、私の手首をつかむ。
「え!?な、なにを~!?」
「まずは、ご飯食べようか?焼き肉に行こうよ。若い子は、お肉が好きだよね?」
「あ、あの!」
「良い店知ってるんだよ。おごってあげるから、お金のことは気にしなくていいからね?」
座り込んでいた私を、引き上げるように強引に立たせる。
見た目に反して積極的、誘ってくるおじさん。
意外とグイグイくる相手に戸惑う。
こちらに返事をする隙さえ与えない。
(これが『噂の神様』か!?)
〔★凛はありがたみを感じない★〕


