彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)




「元々この辺りは、家出してきた未成年が多く集まる。家に帰れない子供達の事情を知った上で、売春をさせているらしいんだ。最近は、逃げれないようにドラック中毒にしている・・・。」

「そこまでご存じなら、どうして警察に言わないんですか?」

「言っても動かないんだよ。」

「えっ!?こんな時まで、民事不介入ですか!?」

「良く知ってるね?でも、そうじゃない。」

「では、悪事の証拠が少ないんですか?」

「・・・大人の事情というやつだ。」



帰ってきた返事は、YESともNOとも言えないもの。



「答えになってませんよ!とにかく、現行犯で捕まえてもらったらいいじゃないですか?ホテルに連れ込んでるとこを通報して・・・」

「1人だけ助けるならそれでいい。だけど、被害者は1人だけじゃない。」

「あ・・・!?」

「こちらで把握してるだけで、約十数人はMESSIAHにつかまってるんだ。実際はもっといる・・・!全員助けなきゃ、意味がないんだよ?」

「す、すみません。僕の考えが浅かったです・・・」



素直に謝れば、ハッとしたような顔で渡瀬さんが言った。



「あ、いや、違うんだ!すまない・・・!君みたいな子供に話すことじゃなかったね。嫌な思いをさせてごめんね?家まで送るよ。」

「いえ、1人で帰ります。」



そう伝えて、椅子から立ち上がったのだが―――――



「あら、坊やどこへ行くの?」

「瑠華ちゃん。」

(セクシーお姉さん!?)



私のゆく手を遮るように美女が立ちふさがる。



「ジュース飲まない?」

「いえ・・・先ほど頂きましたので。ありがとうござ・・・」

「あら~お姉さんが用意した物は飲めないの?」

「あ、そういうわけではないのでですが・・・」

「じゃあ、もう少し休んでいきなさい。」



テーブルにジュースを置き、私の両肩に手を置くと、無理やり座らせる。

そして、自然な動きで私の隣に座った。



「はじめまして。私は瑠華。鳴海瑠華(なるみるか)よ。坊やのお名前は?」

「え?僕は・・・」



フルネームで、名乗るべきかな?

瑞希お兄ちゃんにバレたら困るから・・・



「チョコです。」

「チョコ?」

「そう呼ばれてます。」



〔★あだ名を名乗った★〕