「元々この辺りは、家出してきた未成年が多く集まる。家に帰れない子供達の事情を知った上で、売春をさせているらしいんだ。最近は、逃げれないようにドラック中毒にしている・・・。」
「そこまでご存じなら、どうして警察に言わないんですか?」
「言っても動かないんだよ。」
「えっ!?こんな時まで、民事不介入ですか!?」
「良く知ってるね?でも、そうじゃない。」
「では、悪事の証拠が少ないんですか?」
「・・・大人の事情というやつだ。」
帰ってきた返事は、YESともNOとも言えないもの。
「答えになってませんよ!とにかく、現行犯で捕まえてもらったらいいじゃないですか?ホテルに連れ込んでるとこを通報して・・・」
「1人だけ助けるならそれでいい。だけど、被害者は1人だけじゃない。」
「あ・・・!?」
「こちらで把握してるだけで、約十数人はMESSIAHにつかまってるんだ。実際はもっといる・・・!全員助けなきゃ、意味がないんだよ?」
「す、すみません。僕の考えが浅かったです・・・」
素直に謝れば、ハッとしたような顔で渡瀬さんが言った。
「あ、いや、違うんだ!すまない・・・!君みたいな子供に話すことじゃなかったね。嫌な思いをさせてごめんね?家まで送るよ。」
「いえ、1人で帰ります。」
そう伝えて、椅子から立ち上がったのだが―――――
「あら、坊やどこへ行くの?」
「瑠華ちゃん。」
(セクシーお姉さん!?)
私のゆく手を遮るように美女が立ちふさがる。
「ジュース飲まない?」
「いえ・・・先ほど頂きましたので。ありがとうござ・・・」
「あら~お姉さんが用意した物は飲めないの?」
「あ、そういうわけではないのでですが・・・」
「じゃあ、もう少し休んでいきなさい。」
テーブルにジュースを置き、私の両肩に手を置くと、無理やり座らせる。
そして、自然な動きで私の隣に座った。
「はじめまして。私は瑠華。鳴海瑠華(なるみるか)よ。坊やのお名前は?」
「え?僕は・・・」
フルネームで、名乗るべきかな?
瑞希お兄ちゃんにバレたら困るから・・・
「チョコです。」
「チョコ?」
「そう呼ばれてます。」
〔★あだ名を名乗った★〕


