「警戒しなくていいよ。おいで。」
「・・・うん。」
相手の申し出に同意する。
周りの子が、ヒソヒソ言いながらこちらを見てる。
気になったけど、男について行った。
そこへ行くのかと思ったが・・・
「ここだよ。」
(ここ?)
案内されたのは食堂だった。
(本当に、ご飯を食べるだけなのね・・・)
「好きなのを頼んでいいよ。」
中に入って、席につけば、メニューを渡されて困る。
食べるということは・・・マスクをはずさなければいけない。
それは出来ない。
「どうしたの?決めれないかな?俺のお勧めで良い?」
そう言われ、迷って末に・・・
「これ。」
メニューを指さす。
「ジンジャーエールがいいの?他は?」
「これだけでいいです。」
「じゃあ、とりあえずジンジャーエールね?」
「必ずストローをつけてもらえれば十分です。」
「ははは!じゃあ、わかったよ。」
笑顔で了承してくれる男性。
注文が注文だったので、すぐに持ってきてくれた。
ブルーのストローがささっていた。
「飲みなさい。」
「ありがとうございます。」
お礼を言ってマスクの下から、グラスの中身を吸う。
相手は私を見ながら言った。
「こんな時間に何してんの?」
「お兄さんは?」
(家出した子を薬漬けにする悪い奴でしょ!?)
MESSIAHの仲間だってことは、わかってるんだから!
そんな思いでジッと見れば、相手はニッコリ笑う。
「怪しいものじゃないよ。こういう者です。」
「え?」
差し出されたのは名刺。
「『NPO法人夜回りグループミライ代表取締役・渡瀬学(わたせまなぶ)』・・・?」
「そう。俺ね、君みたいな家出っぽい子に声をかけてるんだよ。」
「え!?良い人!?」
〔★悪い人じゃなかった★〕


