面談室の戸を閉めたところで、いつもよりも小さい声で赤井先生は言った。
「菅原さん、有森さん、話してくれてありがとう。」
「赤井先生・・・」
「遅くなっちゃったね。」
私達を気遣う熱血講師は言う。
「刑事さんも言っていたけど、今の話は、坂口さんのことは、塾の子達には言わないでくれ。今後、また警察が君達に話を聞きたいと言ってくるかもしれないから、今日のことは、塾の方からも親御さんに連絡するからそのつもりでいてくれ。」
「「はい。」」
「じゃあ、気をつけて帰りなさい。」
そう約束させられて解放された。
出口へと向かいながら考えた。
警察は、捜査情報を口にしてはいけない。
だから、私の質問になんか答えるはずないけど・・・
(私の判断は正しい、か・・・)
答えを言ってるようなものじゃない。
「絶対麻薬だよね?」
その言葉に合わせて腕を組まれる。
「有森さん!?」
一緒に事情を聞かれた相手だった。
「絶対サプリメントじゃないと思ったんだよ!」
興奮気味に言う有森さんを遠くに感じる。
野次馬根性丸出しで、はしゃぐ姿に冷める。
(有森さんって、不謹慎ね・・・)
マイナス評価をする私に気づくことなく、彼女のトークは止まらない。
「まさか、警察まで絡んでくるとは、驚きだよね~!?」
「・・・そうですね。」
「何で菅原さんが凹んでるの?」
「それは・・・」
凹むでしょう?
「あの時、サプリメントを持ってるうちに、先生か、警察に通報していたら・・・坂口さん、いなくならなかったかもしれないじゃないですか?」
「菅原さんも、麻薬だって気づいてたんだ?」
「そ、そういうわけじゃ!麻薬とか、決めつけるのは良くないですよ?刑事さんだって、麻薬とは言わなかったし・・・」
「警察が捜査情報を言うわけないじゃない?言ってるようなものだったけど~」
(有森さんも、そう感じたんだ・・・)
「仮に麻薬じゃないとしても、絶対に違法ドラッグだよ!心配しなくても、みんな、なんとなく気づいてたから。」
「え!?みんな!?」
「ナイショとか言いながら、坂口さん、サプリを受け取らなかった子にはすごく逆ギレしてたみたいだから。」
「そうなんですか?」
「そうそう!だから、菅原さんが責任感じることないって!」
そう言って笑うと、彼女は私の腕から離れる。
「だーから、気にしちゃダメだよ~!?バイバイ、菅原さん!」
手をヒラヒラと振りながら、有森さんは陽気に帰って行った。


