彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)




緊張しながら獅子島さんを見る。

相手は、瞬きすることなく、私を見ている。

開いている本のページを見ることなく、じっと見ている。

本当に怖い。



「宿題はどうなってる?」

「え!?」


いきなり声を発したので、驚いて声が上ずってしまった。

それに獅子島さんは、メガネを直しながら言った。



「高千穂達のことだ。」

「あ、ああ!みんな、頑張ってます!」

「夏休み終了までに終わりそうか?」

「はい。頑張ってますので。」

「フン・・・褒美があればできるということか。扱いやすいことだ。」

「あの・・・何か飲みますか?」

「冷蔵庫に麦茶があったはずだ。勝手に飲め。」

「え?獅子島さんは飲まないんですか?」

「氷を入れて持ってこい。」

「はーい。」



自分の分と合わせて用意する。

グラスを取り出し、冷凍庫と冷蔵庫を開ける。



(よかった。これで時間が稼げる。)



「お待たせしました。」



カウンター越しに、獅子島さんの前にグラスを置く。

それに相手は手を伸ばして口づけた。



「どうですか?」

「麦茶だろう?」

「そうですけど。」



そんなやり取りをしつつ、自分の分の麦茶を持ってキッチンから出る。



「・・・。」

「・・・」



(会話が続かない・・・!)



笑顔をキープしつつも、心は修羅場。

チラッと獅子島さんを見れば、本は開いてるけど私を見てる。

だからと言って話しかけてくるそぶりはない。



(なんなの?)



笑顔を作りながら考える。

こちらから声をかけるべきか、話題を振るべきか。

とはいえ、獅子島さんが好きな会話ってわからない。

でも、黙ったままだと精神的につらい。

そんな葛藤を続けた結果。




カランカラーン!




お店の入り口に誰か入ってきた。



(お客さんだ!)



救いの神が現れる。

気まずい空気から解放されることにホッとする。

最高の笑顔でお出迎えをした。



「いらっしゃいませ~!ご注文は何ですかぁ♪」

「息子を助けてください!」

「え!?・・・そういうオーダーは受け付けてないんですが・・・?」



〔★メニューにない注文だ★〕