「もしかして・・・・夜、眠れてないんじゃないですか?」
「寝てないわ!ここ数年、まともに眠れてないから、心療内科の薬を飲んでるわ!あいつらのせいで、家族みんな体の調子が悪くなったの!注意してもこっちを笑って馬鹿にして・・・頭に来たから、診断書をとって裁判をするって言ったら、変な仲間を使って嫌がらせをしてくるの!目撃者や証拠も残らないようにするから、警察は動いてくれないの!特に子供は、今年が受験だから集中できないし、通学用の自転車をパンクさせられたりしたわ!車のボディーやタイヤ、スクーターに傷もつけられた!玄関に動物の糞尿をまかれた!挙句の果てに、うちの子に向かって『お母さんを大人しくさせないともっとひどいことが起こるよ。』って脅してきたのよ!警察に行ったけど、何も起きてないから、民事不介入だから助けてくれない!このままエスカレートして、子供に何かされるかと思うと~頭がおかしくなりそう!!」
(想像以上にひどいわ・・・)
気の毒な修羅場に唖然とする。
病んでる姿でマシンガントークをするので、かける言葉が見つからない。
「もう、つらくて、苦しくて・・・・うぅ・・・!」
「お気持ちわかりますよ、奥様。」
そんな私の代わりに、男前が動いた。
頭を抱えてなげく主婦の肩を、優しく抱く烈司さん。
今日はタバコよりも、コロンの香りが強い気がした。
「あんな連中に、まともなあなたが関わったら、ひどい目に合うでしょう?いや、もう十分、つらい思いをされてますね?」
「そ・・・そうなの!そうなのよっ!嫌がらせだってされてるのよ!藁人形を逆さにしたのを庭に飾ったりして!うちから見える場所に置くのよ!?呪いをかけたって言ってきたりして・・・」
「え?そこは、防犯カメラと録音を使って・・・」
「凛たん。」
優しい声で私を呼ぶ烈司さん。
人差し指を口に当てて、静かにとジェスチャーしてきたので言う通りにした。
その間にも、被害者はつらい胸の内を語る。


