彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)




パトロール、3日目。

その建物が異様なのは、外からでもわかった。



「なっけお、べっかえ、おのんおんお!!」

「なんですか、この声・・・?」

「日本語だろう、凛たん?」

「日本語だけど、日本語が通じない奴らなのよ!」



私と烈司さんの言葉に、顔色の悪い女性が言う。

やってきたのは、パトロールコースがある住宅街。

相談を受けたのは、ご近所の騒音問題で悩む主婦の方からだった。

物陰から、問題の家を盗み見る。

一戸建てが並ぶ住宅街だけど、その家だけ浮いているような感じがした。



「うちは、あの西峰の右隣の家なんです!」



そう語るのが、依頼者である高田さん。

騒音の発信源は西峰と言うらしい。



「西峰の左隣は、耐え切れなく引っ越したのよ!新しく左隣に人が入っても、西峰がうるさいからどの家族もすぐに引っ越していくの!毎日、毎日、朝昼晩、夜中まで、ああやって騒音を出してるのよ!」

「これはひどいですね・・・」


肌がコラーゲンを作り始める時間になってるのに、西見家から聞こえてくる騒音は止まらない。



(音楽なのか、歌なのか・・・・なにを言ってるかわからないけど、大声でなにか唱えてるのかな?)



時々、規則的に鐘や太鼓、なにかの楽器を叩く音もする。

もし、我が家のお隣りさんがああだったらすごく嫌だ。

毎日なんて、堪えられない。



「というか、あの声・・・1人だけじゃないですよね?」

「みんなで集まって言ってるのよ!何度話し合ってもやめてくれない!苦情も言った!持ち家だから、あいつらは引っ越してくれない!警察にも相談したんだけど、騒音被害は注意するだけしかできないって言うのよ!」



問題のお家は、数年前から怪しい宗教にハマり、毎日いろんな人が出入りし、一日中謎の呪文を唱え続けているそうなのだ。

かなり参っているのか、高田さんという人の目の下にはすごいクマが出来ていた。

なので思わず聞いてしまった。