粘る会長夫婦に瑞希お兄ちゃんは言う。
「凛だけにしたくないんすよ。さっきの件で、勘弁してくださいよ?」
「仕方ないな・・・次は一緒に食べてくれよ?」
「もちろんです。なぁ、凛?」
「お、お言葉に甘えます。会長さん、奥さん、ありがとうございます!」
「がははは!どういたしまして!良い子だな~ちゃんとお礼を言えて!」
「可愛いわ~チョコちゃん!すぐにお持ち帰りの用意をするからね!?」
お礼を言えば、会長さんが私の頭をなで、奥さんは料理を手早く容器に詰めていく。
容器に・・・
「あの、その容器って・・・お正月に使う重箱じゃないですか・・・?」
「ほほほ!いっぱい食べてね~」
「大きくなれよ!?」
「はあ・・・」
答えとは言えない返事に、苦笑いしか出てこない。
「じゃあ、失礼しますね。凛も、またな?」
「あ、待って、お兄ちゃん!」
店から出る好きな人を追いかける。
「見送ってくれるのか?」
「うん・・・!」
携帯を触りながら言う瑞希お兄ちゃん。
「お、返事きたきた。烈司、すぐに迎えに来るってよ。」
そう言って笑うと、私の頭をなでてくれた。
「会長からの料理、みんなで食ってていいからな?ただし、俺の分も残しててくれよ?」
「わかりました。」
「良い子だ。」
私の髪をワシャワシャしてからハンドルを握る。
(一緒に帰れるものだと思っていたのに・・・)
ブロロロローン!!
その期待を見事に裏切って、瑞希お兄ちゃんは仕事に行ってしまった。
彼の姿が見えなくなった直後に携帯がなる。
表示を確認してから出た。
「もしもし、烈司さん?」
〈凛たん、瑞希に置いてかれたってー?〉
「言わないでください・・・」
〈わりぃわりぃ!近くを流してたからすぐに迎えに行けるわ。外に出て待っててくれるか?〉
「わかりました。ありがとうございます。」
〈どういたしまして。じゃ、会長にもよろしく!〉
用件だけ言うと、切ってしまう烈司さん。


