彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)





仲間があっという間にやられたことで、敵もこちらに注目する。



「な、何だテメー!?」

「おめらーこそ、わかりやすい嫌がらせして何様のつもりだ?」



声ばかり大きい相手に、拳をならしながら瑞希お兄ちゃんは言った。



「全員、俺がキレる前に、金払って帰れ。そして二度と来るな。」

「なんだと、クソ女!?」



(お、女って!?)



思わず、ずっこけそうになる。

間違えるのも無理はないとはいえ、毎回これだけと嫌になるよね?

怒っちゃうよね?




「ほお・・・そんなに俺と喧嘩したいのかぁ・・・!?」




現に今、好きな人の機嫌が悪くなった。

性別を間違えた馬鹿に、瑞希お兄ちゃんのスイッチが入る。



「備品使って暴れるのは勝手だが、修理代は慰謝料込みで請求するからな?」

「お兄ちゃん、僕もお手伝いを・・・」

「しなくていい!オメーはお店の人を守れ!」

「でも・・・」

「守れよ?」

「はーい。」



瑞希お兄ちゃんが言うなら仕方ない。

特に、お怒りモードなら、黙って従うしかない。



「さあ、行きましょうか?お店の方々。」

「え、え!?」

「行きましょうって・・・」



戸惑う店長さんと、怯えるウェイトレスさんの手をそれぞれにぎる。



「安全なところに避難しましょう。」

「って、はいそうですかで逃がすかよ!?」



誘導しようとしたら邪魔が入る。

近くにいた男が、私の手首をつかんで引き止める。

店長さんとつながっていた手だったので、ウェイトレスさんから手を離して、掴んできた汚い手をひねった。



「えい。」

「ぎゃあああああああああ!?」



丈夫そうな見た目だったけど、あっさり床にうずくまる。

それで数人が、椅子から立ち上がる。

その中の1人が叫ぶ。



「なんだお前ら!?」

「ご覧の通り、善良な一般人です。」

「そうとは思えない行動だぞ!?」

「あったりまえだよ、バカだねぇ!」

「いい加減にしやがれ、馬鹿共が!」



そう言って現れたのは、お店の外で待機してるはずの会長さん夫婦。

奥さんの方が、瑞希お兄ちゃんを指さしながら叫んだ。