仲間があっという間にやられたことで、敵もこちらに注目する。
「な、何だテメー!?」
「おめらーこそ、わかりやすい嫌がらせして何様のつもりだ?」
声ばかり大きい相手に、拳をならしながら瑞希お兄ちゃんは言った。
「全員、俺がキレる前に、金払って帰れ。そして二度と来るな。」
「なんだと、クソ女!?」
(お、女って!?)
思わず、ずっこけそうになる。
間違えるのも無理はないとはいえ、毎回これだけと嫌になるよね?
怒っちゃうよね?
「ほお・・・そんなに俺と喧嘩したいのかぁ・・・!?」
現に今、好きな人の機嫌が悪くなった。
性別を間違えた馬鹿に、瑞希お兄ちゃんのスイッチが入る。
「備品使って暴れるのは勝手だが、修理代は慰謝料込みで請求するからな?」
「お兄ちゃん、僕もお手伝いを・・・」
「しなくていい!オメーはお店の人を守れ!」
「でも・・・」
「守れよ?」
「はーい。」
瑞希お兄ちゃんが言うなら仕方ない。
特に、お怒りモードなら、黙って従うしかない。
「さあ、行きましょうか?お店の方々。」
「え、え!?」
「行きましょうって・・・」
戸惑う店長さんと、怯えるウェイトレスさんの手をそれぞれにぎる。
「安全なところに避難しましょう。」
「って、はいそうですかで逃がすかよ!?」
誘導しようとしたら邪魔が入る。
近くにいた男が、私の手首をつかんで引き止める。
店長さんとつながっていた手だったので、ウェイトレスさんから手を離して、掴んできた汚い手をひねった。
「えい。」
「ぎゃあああああああああ!?」
丈夫そうな見た目だったけど、あっさり床にうずくまる。
それで数人が、椅子から立ち上がる。
その中の1人が叫ぶ。
「なんだお前ら!?」
「ご覧の通り、善良な一般人です。」
「そうとは思えない行動だぞ!?」
「あったりまえだよ、バカだねぇ!」
「いい加減にしやがれ、馬鹿共が!」
そう言って現れたのは、お店の外で待機してるはずの会長さん夫婦。
奥さんの方が、瑞希お兄ちゃんを指さしながら叫んだ。


