彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)




「昨日の帰り際に、坂口さんから・・・言い方は悪いけど、一方的にサプリメントを押し付けられたんです。」

「なんのサプリメントだったの?ビタミン剤とか?」

「それが、勉強の効率が上がるとしか言わなくて・・・いらないって何度も断ったのに、強引に押し付けられました。」

「レイがあなたに、無理やり渡したというの・・・?」

「うん。アレルギーが怖いから・・・表示のない薬は受け取れないって伝えて断ったんですけどね。どうしても飲む気になれないから、今朝返しに行ったの。そしたら、ひどく怒りだして・・・」

「そんなことで?」

「そうなの。あなたは・・・そのサプリメントのこと、なにか知ってますか?」

「知らないよ!・・・なんだろう・・・?」



それで私への、冷たかった視線が消える。

完全に困惑し、考え込む顔になっていた。

その一方で、教室に残っていた生徒達は、あちらこちらでヒソヒソと話し合いを始めていた。



(・・・・周りは、なにか知ってるのかしら?)



「レイが・・・それぐらいのことで、レイが怒るなんて・・・」



信じられないと言わんばかりに言われるが、こっちだっていろいろ信じたくないんだよ。



「あの・・・坂口さんがいなくなってから、彼女の携帯に連絡はしてるんですか?」

「したよ!したけど、返ってこないの!LINEも・・・既読もつかなくて・・・!わけがわからないよ・・・!」



そこで会話は終了した。

教室に赤井先生が入ってきて、井口さんに話しかけたから。

そのまま2人で、坂口さんの荷物を持って出て行ってしまった。

どうやら坂口さんの家族にも伝えたが、本人からはなんの連絡がないらしい。

ざわめく教室を、私はそっと抜け出す。

凛道蓮の携帯の電源を入れる。

LINEで瑞希お兄ちゃんに伝えるために。



(すぐに返事がくればいいけど・・・)



その前に、ヤマトからのLINEを見つける。



―ちゃんと標準語で伝えたで!捜査や逮捕するかは知らんけどなぁ~―



(保護されてればいいんだけど・・・)



そんな思いで画面を見ていたら切り替わった。

表示されたのは、この世で唯一、私を幸せにしてくれるお方だった。