「その薬・・・とても怪しい気がします。坂口さんも、飲まない方が良いですよ?いえ、飲んじゃダメです!」
遠回しで説得を試みる。
言葉を選んで坂口さんにやめてと伝える。
それに彼女は―――
「大きなお世話よ!!」
「あっ!?」
大声で怒鳴りつけると、思いっきり私を突き飛ばした。
「きゃっ!?」
よろけてしまい、床に尻もちをつく。
「い、痛い・・・!」
「あゆみが丘学園の生徒なら、お金持ってるくせに!このこと誰かにしゃべったら、許さないからね!?」
私に罵声を浴びせると、坂口さんは自習室の戸を乱暴に開けて閉めてしまった。
あまりの変わり様に、乱暴な態度に、私も通行人も唖然とする。
「な・・・なにかあったの?」
一部始終を見ていたらしい、女性の講師が寄ってくる。
「突き飛ばされたけど、大丈夫!?怪我してない?」
「あ・・・大丈夫です。」
「一体どうしたの?あなた、彼女になにをしたの?」
「いえ、いらないので、返しただけなんですが・・・」
「はい?」
「あ!?な、なんでもないです。」
助け起こされながら、うっかりしゃべりかけた事実を誤魔化す。
心配する先生に平気だと伝え、お礼を言えば、腑に落ちないような顔をしつつも、授業の準備のために行ってしまった。
(どうしよう・・・)
坂口さんのあの反応。
薬をやめてって言った瞬間、態度が急変した。
(なによりも・・・かなり薬に執着していた・・・)
それって、学校で習った薬物中毒の症状に似ている。
(思っていた以上に、最悪の事態なのかも知れない・・・!)
「見てたよ。」
そう言って、肩を叩かれる。
「え!?」
ビックリして振り返れば、知らない女の子がいた。


