彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)





「その薬・・・とても怪しい気がします。坂口さんも、飲まない方が良いですよ?いえ、飲んじゃダメです!」



遠回しで説得を試みる。

言葉を選んで坂口さんにやめてと伝える。

それに彼女は―――



「大きなお世話よ!!」

「あっ!?」



大声で怒鳴りつけると、思いっきり私を突き飛ばした。



「きゃっ!?」



よろけてしまい、床に尻もちをつく。



「い、痛い・・・!」

「あゆみが丘学園の生徒なら、お金持ってるくせに!このこと誰かにしゃべったら、許さないからね!?」



私に罵声を浴びせると、坂口さんは自習室の戸を乱暴に開けて閉めてしまった。

あまりの変わり様に、乱暴な態度に、私も通行人も唖然とする。



「な・・・なにかあったの?」



一部始終を見ていたらしい、女性の講師が寄ってくる。



「突き飛ばされたけど、大丈夫!?怪我してない?」

「あ・・・大丈夫です。」

「一体どうしたの?あなた、彼女になにをしたの?」

「いえ、いらないので、返しただけなんですが・・・」

「はい?」

「あ!?な、なんでもないです。」



助け起こされながら、うっかりしゃべりかけた事実を誤魔化す。

心配する先生に平気だと伝え、お礼を言えば、腑に落ちないような顔をしつつも、授業の準備のために行ってしまった。



(どうしよう・・・)



坂口さんのあの反応。

薬をやめてって言った瞬間、態度が急変した。



(なによりも・・・かなり薬に執着していた・・・)



それって、学校で習った薬物中毒の症状に似ている。



(思っていた以上に、最悪の事態なのかも知れない・・・!)



「見てたよ。」



そう言って、肩を叩かれる。



「え!?」



ビックリして振り返れば、知らない女の子がいた。