彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)





ギョッとして聞き返せば、瑞希お兄ちゃんは顔を上げる。

その目つきはガラリと変わっていた。



(初代総長の顔だ・・・)



険しくも、うるわしい表情になっている。

口を開いた彼は、有無を言わさぬ口調で言った。




「いいから帰れ、凛。初代命令だ。」

「で、でも!」

「初代の言うことは?」

「う・・・絶対、です・・・・。」

「じゃあいいな?」

「はい・・・」

(不幸だ・・・私。)



好きな人の言葉に、イヤイヤうなずく。

わがままを言えば、嫌われるとわかっていたので素直に応じた。



〔★凛は瑞希に逆らえない★〕



ガックリしながら、瑞希お兄ちゃんの頭から手を離す。

それに伴い、彼から少しだけ身を離したら――――――





「良い子だ。」

チュッ!


「え!?」





聞きわけの良かった私に、瑞希お兄ちゃんは額にキスしてくれた。



(ええええええええええええええ!?)



「お、お兄ちゃん・・・・・・・・!?」

「おりゃあ、聞き分けの良い子は好きなんだ。」



初めて会った時のような、いじわるな顔つきで笑うお方。



「これは俺らだけの秘密、モニカには内緒な?」

「はい・・・♪」



瑞希お兄ちゃんからの口止めに、首を縦に振ってそのままうつむいてしまう。



(ああ、幸せだ私!!)



でも、心はとっても前向き!!



〔★凛は元気を取り戻した★〕



上機嫌になった私に、瑞希お兄ちゃんが優しく言う。



「よしよし、機嫌治ったな?」

「うん♪」

「そうだ、これ持って帰れ。モニカが作ったサンプルだけど、龍星軍の腕章だ。」



そう言いながら私の腕に腕章をつけてくれた。



「ありがとうございます♪」

「よーしよし!じゃあな、凛。気をつけて帰れよ?」

「はぁーい♪」



瑞希お兄ちゃんにヨシヨシされ、裏口まで誘導され、外へと出される。

笑顔でお見送りをされる。

しばらくポーっとしていたが、ハッと我に返る。



(いいように、あしらわれた!?)



(チョロいよ、私―――――――――!)



〔★その通りだ★〕