「…気になる人がいるんです」
「二宮でしょ?」
「え、」
「二宮のこと好きでもいい。それでも僕と付き合えないかな」
「そんなことできません」
私はキッパリとそう言った。
「今だって、頭に浮かぶのは想くんのことばっかりなんです」
「実希ちゃん…」
「こんな状態で一之瀬さんと付き合っても、一之瀬さんのこと傷つけちゃうだけです」
一之瀬さんが苦しそうに顔を歪めるのを見て、心が痛んだ。それでも、思わせぶりなことを言って期待させるより、断然いい。私は毅然とした態度で一之瀬さんを見つめた。一之瀬さんは困ったように笑った。
「…なんで、もっと早く気づかなかったんだろう」
「一之瀬さん、」
「実希ちゃんが告白してくれたとき、好きだって気づいてればなあ…なんて、女々しいよね」
「…そんな、ことないです」
「うん、諦めるよ。ごめんね、困らせるようなこと言って。実希ちゃん、」
「二宮、平日のバイト前はよく前のカフェで時間潰してる。明日は夕方からバイト入ってるはずから、行けば会えるよ」
その瞬間、想くんの冷たい目線が頭をよぎる。そんな私の考えることを察したのか、一之瀬さんは「大丈夫」と優しく声をかけてくれた。その優しさに泣きそうになる。
「素直じゃないけど、すごく優しい奴だから。大丈夫だよ」
〝泣かせてしまうんじゃないかと思うと、言えなかった〟
〝ごめん〟
これまでの想くんの言葉を反芻する。そうだ、嘘だらけの想くんはいつだって優しかった。


