いちごのタルトも食べ終え、カフェモカも飲み終わり、夏目さんが「出ようか」と言って、私たちはカフェを出た。

外に出ると辺りはオレンジ色に染まっていた。
綺麗な夕日。

「こんな時間になっちゃったね。ごめんねせっかくのお休みなのに」

「いえ!こちらこそ…。私は楽しかったので、いいのですが…」

ちらっと夏目さんを見る。
夏目さんは、楽しくなかったかな…?
私、話術とかもないし、楽しませるほどの余裕がなかったし…。

「ふぅ…それは無意識に言ってるんだよね?恐ろしいなあ亜子は」

え?
車へ向かって歩いていて、中に入ったらすぐにキスをされた。

「な、夏目さん…っ?」

「亜子が可愛すぎるのが悪い。嫌だったら殴っていいから」

それから何回も何回もキスをされた。
角度を変えたりしながら。
ついていくのが精一杯で、頭の中は真っ白。
いつ息をすればいいのか分からなくて、苦しくなった。

「ふっ…ん…」

夏目さんの胸を叩く。
命の危険がっ…!!

恐らく分かっていたのだろう。私が息をしていなかったから苦しいのが。

「亜子、キスしてる時は、鼻呼吸だよ。まあ、舌入れたらどっちでもいいんだけどね」

舌?
頭にハテナが浮かんだ瞬間に、口の中に温かいものが。

「んんっ…?!////」

これは、ディープキスってやつ?!
私、ついていけるかな…ついていけなそう!
どうしたらいいのぉーっ!?

「ふ…ぇ、夏目さん…っ」

ハッとしたように私から離れた夏目さんは、私のことを見て悲しそうに眉を下げた。

「ごめん。…はぁ…俺まじ余裕無さすぎ…。怖い思いさせてごめんな、亜子」

私の頭をぽんぽんと撫でる夏目さんの手は、とても暖かくて優しかった。