【side 葵】




『卒業式終わったら、これを深侑に渡してほしいの。
深侑のことお願いね』




卒業式の前日、夏生センパイにそう言われて手紙を預かった。




尊敬する夏生センパイがいなくなってしまうのは悲しかった。




でも深侑のことを頼まれて、もしかしたらアタシにもチャンスがあるのかなって思ってしまった。




そんなのあるわけないのに。




「……夏生が決めたならそれでいい。
今さら追いかけたって追いつかないし」




そう言う深侑の表情は寂しそうで悔しそうだった。




アタシが寂しい気持ちを埋めてあげればいい、なんて考えられなかった。




深侑には後悔してほしくない、夏生センパイに思いを伝えてほしい。




気付けば深侑にあんなこと言って背中押しちゃった。