空は晴れてるのに、頬に大粒の雨が落ちてきた。
「私は……ずっと深侑が好きだった!
でも深侑はいつも夏生センパイしか見てなかった。
これをチャンスにしようかと思ったよ?
でも深侑のそんな顔見てたらズルいことできないなって。
深侑に後悔だけはして欲しくない!
また失いたいの!?家族に幼なじみ、そして好きな人を……っ!」
失う。
そっか、俺はまた失うんだ。
11歳の時に家族がいなくなった。
14歳の時に幼なじみがいなくなった。
そして今、好きな人がいなくなろうとしてる。
大事なものが全部なくなろうとしてる。
このまま終わっていいのか。
夏生に勘違いされたまま、好きな人を失っていいのか。
『だめだよ深侑。
全部なくしちゃったら、絶対に後悔するよ!
走れ!前に進め少年!』
いきなり強風が襲いかかり、それとともに茜にこういわれた気がした。
「…葵、ありがとう。……茜も」
風の勢いで起き上がり手紙を強く握って屋上を出た。
【side end】