「アタシもセンパイが東京に行くって昨日聞かされて。
でも深侑には卒業式まで言わないでほしいって、卒業式終わったらこの手紙を渡してって言われて」
「……そ…」
「そ…って追いかけないの!?
センパイ東京に行っちゃうんだよ!?次いつ会えるか分からないんだよ……っ!?」
俺が追いかけてどうなる?
夏生が進もうとしてるのを邪魔するだけ。
夏生が決めたなら何も言わないし、する気もない。
「……夏生が決めたならそれでいい。
今さら追いかけたって追いつかないし」
そうだ。
今さら追いかけたってもう夏生は翼さんと電車に乗ってるはず。
「……んで……なんでそんな寂しそうな顔してそんなこと言えんのよ……っ!
そんな顔するくらいなら追いかけてよ……っ!」
葵に勢いよく両肩を掴まれてコンクリートの地面に押さえつけられる。
葵は今にも泣きそうなのか怒ってるのか分からない表情を浮かべる。
そんな顔ってどんな顔してるのか分からない。