どこからか舞ってきた桜の花びらを掴もうと手を伸ばす。
「…あ、いた……っ!深侑……っ!」
"深侑!"
「…っ……葵か」
葵が俺を呼ぶ声が夏生の声と重なった。
一瞬、夏生が来たのかと思った。
息を切らして俺に近づく葵の手には封筒のようなものが。
先輩に告白されて嬉しくて俺のところに来たとか?
でもその封筒を俺に渡してきた。
「……なに、誰から。
こんなのいらな……」
「夏生センパイからだって言っても?」
「……え、夏生から……?」
女子からの手紙なら読まずに捨てようと思ったのに、葵からその名前を聞いた瞬間にすぐに手紙を受け取る。
封筒には夏生の字で"深侑へ"と小さく書かれていた。
なんで手紙なんか……
言いたいことがあるなら直接言えばいいのに。
真っ白な封筒を開けて二つ降りになっている便箋を開いた。



