なれたなら。ーさよなら、私の大好きな人ー





「ここで会ったのも何かの縁だし家まで送るよ。
女の子一人じゃ危ないし」


「ありがとうと言いたいけど、大丈夫。
まだ寄り道していこうかと思ってたから」




今日は、今日だけは早く家に帰りたくない。
きっと家に帰ればお母さんにお姉ちゃんのお墓に行ってきたよって言われるはず。




それが何よりも辛い。
私はお姉ちゃんが亡くなってからまだ一回もお姉ちゃんのお墓に行ったことがない。




自分の誕生日のせいで帰らぬ人となってしまったお姉ちゃんに合わせる顔なんてない。




「…え、どうして……あ、そっか。今日だったね」


「……うん。今日で3年経つよ」




どうして私が家に帰ろうとしないのか翼くんはすぐに分かってくれた。




それでも翼くんは何も言わないし、これ以上触れてこない。




そんな翼くんの隣はとても居心地がいいんだ。




するといきなり翼くんに手を握られた。




「じゃあ、お兄さんと少し寄り道していこうか」


「え、え、翼くん……っ!?」




手を引っ張られるまま翼くんの後についていくことになってしまった。