なれたなら。ーさよなら、私の大好きな人ー





放課後。
あれから深侑には会って謝ろうと思っても勇気が出ずに会えなかった。




真っ直ぐ家に帰るのも気が引けるから市立図書館で閉館するまで勉強をした。




今日はお父さんとお母さんもいつもより静かになる。
それがまるで私の罪を責められてるみたいで。




二人はいつも通りを装っていてもどこかぎこちないのはすぐに分かる。




だから真っ直ぐ家には帰りたくなかった。




どこか寄って帰ろうかな。
もういっそ夕飯食べて行こうかな。




「……夏生ちゃん?」


「…え、翼くん?」




色んな人で賑わう中、私の名前を呼ぶ声がはっきりと聞こえた。




振り返るとスーツ姿の翼くんがいた。




「こんばんは。夏生ちゃん学校帰り?」


「こんばんは。
さっきまで図書館で勉強してて、その帰りだよ」


「そっか。もうすぐ就職試験か」


「そう。翼くんは仕事帰り?」


「うん。今日は疲れた~」


「お疲れさまです」




こんな他愛もない会話が家に帰りたくなかった私には嬉しかった。