なれたなら。ーさよなら、私の大好きな人ー





美味しそうにシュークリームを食べる深侑を見ると、深侑の口の端にカスタードがついていた。




「深侑。クリームついてる」


「……ん、」




深侑は食べるのをやめて私の方に体を寄せた。
私はカバンからティッシュを出して口の端についたカスタードを取ってあげる。




ティッシュを丸めてテーブルに置いて再びお弁当を食べ始めると、向かいから二つの視線を感じて箸を止める。




葵ちゃんは眉間にシワを寄せて何度も頷いていて、柊花はラーメンを食べる手前で口を開けたまま止まっていた。




「…え、な、なに……?」


「あ、いや、これが"深侑ママ"かと思いまして」


「え?深侑ママ?何それ」




葵ちゃんの言ってることが理解できない。




「女子の間で噂になってるんですよ。
深侑の隣には深侑に世話を焼く美人のセンパイがいるって。

完璧に夏生センパイのことだろうと思ってたんですけど、それを目の当たりにすると確かにと思いまして」


「いやいやいや!確かにじゃないでしょ……!」




こうやって深侑に世話を焼いてるところを見られて、更には噂にまでなってるなんて……!




こんな公衆の面前でやってればそうなるか。
当たり前にやってたから気づかなかった。