「助けて」
幼い私は何も知らなかった。
「良かった。下の娘さんは助かった…しかし、あとの3人は…」
この「助けて」の声は、私だけ聞こえてたのかな。
私ははっきり覚えてる。
病室にいたのは、私とお医者さんと看護師さんだけ。
そう。
家族は誰もいなくなったんだ。

みんなどこにいるの?
返事してよ
怖い

心の叫びは誰にも聞こえてない。
「助けて」は聞こえても、心の中なんてわかるわけないよ…

家族のみんなならわかるよね。
でももういないんだ。

お母さん。お父さん。お姉ちゃん。
事故の原因は私。
小さい頃は何も知らなかった。

その日私たち家族は、遊園地に行った。
事故が起きたのは、遊園地の帰りのこと。
車が高速道路を走っていると、私が遊園地で買った風船が車内を泳いだ。
正面のガラスは見えなくなり、ガードレールに突っ込み、そのまま崖に落ちた。

私はそれを今まで知らなかった。
葬式の記憶もないし…。
去年の夏。お墓参りに行ったら、お坊さんが全て話してくれた。

そこから私は生きる意味もわからなくなってしまった。
友達もいない、ひとりぼっちで生活しても楽しくないし。

お母さん、お父さん、お姉ちゃん、ごめんなさい。

毎日、私はどうして生きているのかわからないままだ。