「…俺の…好きな人。」



ぽつりと零れ落ちてく

誰にも言えなかった



携帯から写真フォルダを開き、ベットで体を起こしたばかりの瑠衣に見せつける


「この人。…“緑”っていうんだ」


「…綺麗な人。」


瑠衣は写真を覗き込みふっと柔らかく表情を緩めた



俺の前で心から、笑った



のだと思う








「…緑には彼氏がいて。


叶わない 恋 なんだ。
……本当はそれだけじゃなくて、

色々理由はあるけれど…

俺の恋が叶う事は絶対にない。」






自分で言っておいて苦しい







瑠衣はまるで私も悲しい、とでも言うかのような瞳を俺に向ける




「…今日は、ごめん。
男嫌いと知っていたのに…。」





苦しいんだ
どうしようもなく。


きっと恋じゃない。


だって俺には“緑”がいる


好きなヒトがいる





こんな感情になったのは

きっと、情が湧いたせい。



ただ、それだけだ。







自分に言い聞かせるようにして瑠衣に頭を下げると瑠衣は戸惑ったようにしてから

優しく俺の頭に触れた


「…空は、悪くないよ」


涙が出そうになった


「私が、弱いから」


違う


「…私こそ、ごめん」


そんな言葉を聞きたくて謝ったんじゃない
緑のことを言ったんじゃない


「…もしも、俺を許してくれるんだったら…

明日

俺の家に来て。




両親だって姉だって、いるから」





傷つけないと誓うから






瑠衣の強さにあてられたのだ

俺も強くならねばならんと

俺も、止まったままではいけないと。




「うん。いいよ」





俺は俺の恋に終止符を打つ決意を固めた





外では深い雨がまだまだ降り注いでいた