『空は最近どう?彼女とかできたかなw
あ、でもこんなこと聞かれたら迷惑かな?ごめんね
最近会わなくて寂しいな
また連絡してきてね』




爽やかな朝のはずなのに気分が重いのはきっとこのメールのせい。



たった一言に振り回されてしまっている自分が憎い







「はぁ」と澄み渡る晴天に似合わないため息をこぼした時、もう一通メールが届いていたことに気がついた



『昨日は紗奈がごめんね。』



彼氏に送るメールの内容じゃないね
と自分の中で軽いツッコミする

自然と口元が緩んで笑いが漏れた





俺は冷たい目で柔らかく笑んでもう一度最初のメールのページを開いた


返信ボタンを押して打ちこむ




『彼女、できたよ。また紹介する』




自分でも呆れるほどの短文だけれど

好きな奴に彼女を紹介しに行く俺の気持ちを汲んで許してください





彼女。かぁ…

ベットに飛び込んで柔らかい布団に顔を埋めた

自分の匂い、つまり男の匂いがしてなんだか悲しくなる。

起きたばかりだというのに布団に飛び込んでしまえば

その安心感と現実逃避に昨日を反芻しながらまどろんでしまった




〜〜〜〜



「どうしたの?」


目をパチクリさせた彼女が紗奈と引き換えに俺を見据える

いとこという血筋だからかその瞳に一切の迷いも曇りもない

美しいと感嘆の声が漏れるばかりである。




「…俺は、君に付き合って欲しいと頼んだ。」

「? うん」



彼女は今更なんだろう?とでもいうかのように首をかしげる



それをわかっていて俺は言葉を続けた





「正直、自分勝手だったよね。でも断る余地は残しておいたつもり。
…それでも君は俺と付き合うことを選んだ」


「うん」


俺の言いたいことを理解しきれていない彼女に向けて


「…俺には、好きな人がいる。
その思いとの決別のために君を利用したいんだよ?
…利用されるとわかっていても君は俺と付き合うんだね?」


これは優しさ。

これは最終確認





もう
戻れないから



紗奈と話して俺のおもいは決まった
俺は本気でこの少女の手助けをしようじゃないか。



そのかわり…

存分に利用させて欲しい




––––これはその確認だよ




わかっているのかわかっていないのか


彼女は“にやっ”と口角を上げてまた俺にあのまっすぐな瞳を向けた


「…利害一致だね」




…これは嘘の関係
俺たちには“恋”も“愛”もない。



それでも“恋愛”してみようじゃないか。




「よろしくね。…瑠衣」

握手を求めて手を差し出すと彼女は躊躇うことを知らないかのようにオレの手を握り返した



「…よろしく」