「あれ、帰国子女なの?」
章が田野畑さんに話しかける。

「いえ、クオータですよ。祖母がフィリピン人の。
長期休みはフィリピンに行くし、祖母と会話するために英語勉強したんですよ」

「へぇ、おばあちゃん大好きなんだね」


何となく話を振られる気がしたので、ささっと席を立つ。
章はかなりのばあちゃん子だったな、と思い出しながら。

章のおばあちゃん‐ばあば様。
私も大好きだった。
私には祖父母が近くに居なかったから、私にとってもおばあちゃんと言えば、やはりばあば様だった。

‐いつだったか、思い出す。
ばあば様から『章と結婚すれば、本当のおばあちゃんになる』なんてことを言われたことを。

確か、章の伯母さんの結婚式の写真を見ながら・・・。
『伯母さんの結婚相手には連れ子がいて、いきなりおばあちゃんになった』という話からはじまったような気がする。

それで伯母さんの結婚相手は、章のお父さんの大学時代からの合同研究者だったような。
10年ぐらい先輩のノルウェー人で・・・


そんなことを思い出しながら、自販機で水を買って、席に戻る。