ガブリエウは私をぎゅっと抱きしめる。

‐マナミ、僕は3年間楽しかったよ。
・・・でも、本当にもうお別れなんだね、寂しいよ。

抱きしめる手をほどくと、ガブリエウから少し涙が流れていた。

‐私も楽しかったわ。本当に3年間、楽しかった。
まぁ結局ブラジル訛りは直らなかったけどね。

そう言うと、少しガブリエウは笑った。

‐確かに!君のポルトガル人の文法をブラジル訛りで喋るのは直らなかったね。


それを聞いてエリックも笑っている。

‐確かにそうだね。面白い。
でもマナミ、本当にいいのかい?辞めずに日本に転籍すればいいんだよ。
辞める必要はあるのかい?

何度もエリックに「本当に辞めるのか?」と聞かれている。
でも私は、辞める選択をした。

‐いいんです。私はエリックと仕事ができて、とても幸せでした。
もうこれ以上の仕事はできないでしょう。やり切りました。
だから、もう十分です。

私は3年間、ひたすらエリックの秘書として働いた。
日本に転籍しても、これ以上やりがいがある仕事に出会えるとは思っていない。
それに当時の企画部はなくなり、みんな散り散りになってしまった。
もう、十分やり切った。


‐それに『夫婦で同じ会社』は気まずいですよ。

そう言うと、みんな声をあげて笑った。