そしてバスはやってくる。

今度こそ、本当にお別れだ。


「毎日連絡するよ。今はラインがあって良かった。英語じゃなくていいしね」

「そうだね」

「トランジットの間に連絡するよ。多分深夜になっちゃうけど」

「すごい長旅だけど、頑張ってね」

「ノルウェー着いたら早速エリックにいじめられるよ。憂鬱だ」

章がはぁ、とため息をはくと同時に、バスが目の前で停車する。


章は立ち上がると‐また私の唇にキスをした。

「年末は2人で過ごそう。じゃぁね」


そして章はバスに乗り込み、行ってしまった。


1人になったバス停。
余韻に浸る間もなく、すぐに反対方面のバスが到着した。

ICカードをタッチして、バスに乗る。
乗客は私1人だけ。
座席に腰かけるとバスは発進し、どんどんと『あの町』から離れていく。



目の前の電光掲示板から、昨日のニュースが流れている。

『村田幹事長が明日午後から会見。同じく野党議員の弟が自殺しているのが発見された問題で、自ら幹事長を辞職す…………………』

途中で文字が読めなくなる。
我慢していたけれど、涙がボロボロ溢れて止まらない。


(大丈夫、きっと大丈夫)


私達はきっと大丈夫。
離れていても、やっていける。


きっと、大丈夫。