いよいよ夜明けが近付いてきた。
再び別れの時間がやってくる。


私達は家を後にして、あのバス停まで歩いていく。
2人が別れた、あの寂れたバス停まで。

歩きながらも、沢山の話をした。

「ポルトガルからノルウェーって直行便あるんだっけ?」

「あるけど、ヨーロッパはLCCが発達してるから、多分ドイツとかストックホルムで会うのがいいと思うよ」

「じゃぁドイツ行ったら本場のウインナーが食べたい」


なるべく私達は、未来の話をする。
一緒に居る未来を信じたいから。

章が乗るのは、大きなバスターミナルへ向かうバス。
そこから空港への直通バスに乗る。
私は1本後の、反対方向。鉄道の駅へ向かうバス。

また私が章を見送ることになった。


バス停に到着し、並んでベンチに腰かけると、何となくお互いに黙ってしまう。
空を見ると、朝焼けで真っ赤に染まっていた。


「あの時も言ったなぁ。時間が止まればいいのにって」

章のその言葉に、「うん」と呟くのが精一杯。


‐今度は泣かない。私達には未来がある。

何度もそう自分に言い聞かせた。