ようやく章からメッセージがきた。


『下に居る。出てこれる?』


私は『すぐ行く』とだけ返信して、急いでマンションのエントランスまで駆けていった。


エントランスに到着すると、前のパーキングで章が立っているのが見えた。
私は章に近づいて「おまたせ」と声をかける。


「こちらこそ…って、えっ?!」



章はまじまじと私を見つめている。

「どうしたの、それ?!」

「いいでしょ、10年ぶりぐらい」


私は‐髪を切った。
ばっさりと短く。ショートボブに。


「久しぶりに切ったよ、やっぱり気分変わるね」


章は少し微笑んで「似合ってるよ」と呟いた後、はぁと大きなため息をついた。

晴れやかな私の表情で、何を言いたいのかわかったらしい。



「乗って、最後の夜だよ」


そう言って車の助手席のドアを開けた。



私達は、最後の夜を迎える。


2人が日本で過ごす、最後の夜を。