目は相変わらず、虚ろ気な伏せ目。


「向こうも向こうでね、都会で働きたいって思っていたらしくてね。お互い『当たり前』からはみ出す勇気はなかったわけ。結局それで『離婚』っていう回りの人達を巻き込む結果になった。
私は離婚した後カナダに渡って、今の旦那と出会って、結婚したの」


原田さんは伏せ目から一転して、私をまっすぐに見つめはじめた。


「まなちゃん、人生は長いんだよ。
やり残した気持ちが、いつか大きくなって、周りとの溝になるかもしれない。大切な人との溝になるかもしれない。
だから、本当にやりたいことを考えた方がいい」



原田さんの言葉を聞きながら、私は早苗お姉ちゃんの言葉を思い出していた。


「一回しかない人生じゃん?
『やり切った!』て思えるぐらい、働きたいのよ」


イキイキとしながら仕事している早苗お姉ちゃん。




‐私は、やり切ったと言える?


‐『後悔しない』って言い切れる?



‐本当に?