「えみ、コーヒーいる?カフェオレにしようか?」


隣に居た章が立ちあがって、キッチンの方向を向いた。

「うーん、いいや・・・」

私は空返事をして、ごろんとソファーにうずくまる。

時計を見ると、もうすぐ朝の11時になろうとしている。
昨日から降り続いている雨のせいで、日が部屋に入ってこない。
おかげで時間感覚があまりない。


昨日は、章と2人でここ‐早苗お姉ちゃんの部屋 に帰ってきた。
志木さんはまだ、あの弁護士の先生や大旦那さまと話をするとのことで、先に私達2人が帰された。

帰ってきて気付いたことだが、章が上着を脱ぐと、内ポケットからポソッと茶色い封筒が落ちてきた。
中を確認すると、案の定と言うべきか。
私の月給より、遥かに多い札束が入っていた。

どうやらこれで『黙っておけ』と、いうことらしい。


とは言え、沢山の人が出入りするビルだ。
目撃者が居ないという保証はないので、私のことがバレてしまう可能性は大いにある。
仕方がないので、しばらく自宅待機になった。
章も目撃者ということで、一応。