歓迎会は夜10時を回って解散になった。

駅では各方向に別れる。
私と橋本は池袋を経由するので、山手線外回り組だ。

「瀬崎さんはどちらですか?」
橋本が聞く。

「新宿です。そこから丸ノ内線か・・・歩いても帰れる距離ですが」

「じゃぁ方向一緒ですね。いいとこ住んでいますねぇ」

橋本は好んで実家暮らしだろうと突っ込みたくなる。

平日の夜10時の山手線は、座れはしないものの人はさほど居ない。

「渡辺さん、ひょっとして実家?」
章が何気に話しかける。

「さすがに入間からだと遠いです。通えなくはないですが。練馬あたりですよ」

「もうちょっと通いやすいとこ住めよって言いたくなるけど『西武線がいいんです!』だってさ」

「実家暮らしの橋本に言われたくない」

「俺は埼玉から離れられないんだよ。お前だって西武線から離れられないから同類だ」

「何か府に落ちない・・・」

章がくすっと笑って私を見ている。