うっとおしいぐらいの章の愛情を受けて、翌朝を迎えた。

がっちりとホールドして眠る章をなんとかすり抜け、玄関にあったスーツケースを取りに行く。
着替えと化粧道具の準備もと思い、リビングのテーブルに化粧道具を並べはじめる。


すると隣のベッドルームから-ガタ、ドタドタという音が勢い良く響く。
ふと顔を上げると-章が息を切らせてこっちを見ていた。

「おはよ…」
言い終わる前に、章は私を抱きしめた。


「よかった、夢じゃない」
頭をぐりぐり撫でながら、何度も「よかった」と章は呟く。


「そろそろ準備するね」
抱きしめる手を解くと-章は少し不満そうに言った。


「今日休んじゃおうか2人で」
それもいいかも知れないけれど・・・


「ダメですよ。展示会近いんだし。ね、瀬崎さん」
そう言うと章は一瞬落ち込み-顔を上げると、いつものビジネス用の顔に変わった。


「そうですね、渡辺さん。頑張らないと」
章のその言葉にクスっと笑って、私達は朝の準備に入った。