私がはっきりと目を覚ましたのは、次の日の朝だった。
私は章が居たと言って暴れ狂っていたけれど、誰も信じてくれなかったのだ。

そもそも章が来ることは誰にも言っておらず、当日のサプライズだった。
信じてくれる筈はない。


「俺は夕方頃に帰された。何か偉そうな奴に今日は帰れと言われて・・・
次の日に病院へ行くと、忽然と居なくなってた」


そう、私達は・・・忽然と姿を消した。


『過去を捨てるため』に。


「本当に、全部捨ててしまえたらいいのに・・・」


この傷も、火傷の跡も、章への思いも・・・
それは全部『なかったことに』はできない証拠だ。


章はゆっくりと抱き締める手をほどいた。
「何があったか、話して欲しい」


そして私は、ゆっくりと話しはじめる。

「どこから話そうか・・・『あの日』までのこと」


ゆっくりと、私は記憶の扉を開く。

‐封印されていた、記憶の扉を。