最後の音を奏でるために、
鍵盤を押し、ペダルをゆっくり離した。


演奏が終わってから、まだたった3秒、
3秒しか経っていないのに、
一瞬の沈黙が永遠の時間のように
余韻を残してくれる。


「…これでいい?」


と、声をかけると、君は少し切ないような、
そんな瞳をしていた。


「うん、やっぱり君の音は綺麗だ。」


あの切ない瞳と“やっぱり”
という言葉が引っかかった。


そんなことを考えていると


「なんで疑問系なの(笑)」


と、君が笑った。


君がそんなに優しく笑うのは知らなかった。


けれど、私はこの人を
知っている気がしたんだ。