音楽室に入ると、私は待ってましたとばかりに片桐夕陽(かたぎりゆうひ)に声をかけられた。





「高塚きいて!春休み明けテスト、この私が、英語50点!」





嬉しそうに話す片桐に、私も明るくよかったやん、と返す。





身長170cmの片桐はトロンボーン担当で、私と家が近い。瑞穂の次に仲が良い友だちだ。





最近髪をばっさり切って、さらに大人っぽくなったな、と私は思う。





「うわ、負けた!」





突然、後ろから悔しそうな声が聞こえてきた。





坂井伊月(さかいいつき)。吹奏楽部に2人しかいない男子部員のうちの1人だ。





アルトサックス担当で、去年はテナーサックスを吹いていたこともある。高校2年の部員の中で、唯一の外部進学組だ。





もう1人の男子部員も隣に立っていて、私に高塚は?と聞いてくる。





松島亮也(まつしまりょうや)。片桐と同じくトロンボーン担当で、成績が良い。





…私たちとは違って





松島の問いに、片桐プラス5点…とか細い声で返す。





「俺よゆーで80~」





そう自慢気に語る松島に私、片桐、坂井ちゃんはわかりきったことだと潔く諦める。





そこへ瑞穂がやってきた。状況を瞬時に理解したらしく、すっと松島の隣に並ぶ。





…ちなみに瑞穂は松島サイド、成績が良い。





これで5人が揃った。絶対にというわけではないが、私、瑞穂、片桐、坂井ちゃん、松島の5人は一緒にいることが多く、仲が良い。





ちなみに坂井ちゃん、いうのは坂井伊月のあだ名で、おそらく私しかそう呼んでいない。





いいあだ名だと思うんだけどな…。