「朝日様が、美しい細長をお召になっておられましたわ!まぁ、姫様には、何も贈られはしないのに!」

私付きの女房が激怒している。
その相手は、私の姉君、朝日こと、旭子(あきらこ)だ。

「気取って、紅梅なんか着ていたらしいわね。」

脇息にもたれ掛かり、手の中で檜扇を弄んだ。

紅梅というのは、装束の襲の種類で、表が紅で裏が蘇芳。どちらも赤系統の色である。

姉が、羨ましいわ。
私なんか、滅多に装束なんて、頂けない。哀れと思ったお父様が仕立ててくれるだけよ。

「まぁ、あちらは、まだ母君がご存命だかり。」