今では、もう昔の事となるのであるが、あるお邸に、姫君がいた。

衣通姫で、琵琶の名手であったが、幸せを知らなかった。

世の中は 空しきものと 知る時し
 いよよますます 悲しかりけり

-私は独りで、寂しいのか-