何事もなかったかのように生きて来たのかもしれない。


式場へと足を踏み入れると沢山の人でごった返していた。


2人分の葬儀と一度に行うと、想像以上の人が集まるようだ。


その人ごみをかき分けて親族席へと向かう。


徐々に見えて来る剛の姿に、腹部が鈍く傷んだ。


もう痛くないハズの痛みは近づくにつれて増して行く。


「兄さん、俺の彼女」


宏哉がそう言い、あたしはジッと剛を見つめた。


剛は憔悴していて顔を上げようともしない。


あたしが、ここにいるだなんて想像もしていないことだろう。